多くの人は「掃除が命を守る」といってもピンとこないかもしれません。
掃除といえば家の中の汚れを掃いたり拭いたりすればきれいになるといったイメージを持たれているのではないでしょうか。
どうやら掃除をこういうイメージでとらえる最初のきっかけは小学校で体験した掃除のやり方が影響しているようなのです。まず、椅子を机の上にのせて一斉に移動させ、ほうきで掃いたり雑巾がけする。これが掃除だと。
私は32年間、人の命を預かる病院や施設で掃除の仕事に携わってきました。
免疫力が低下した患者さんは、舞い上がったほこりを吸ったり、病原体に汚染された手すりやドアノブを触った手により感染することがあります。病院や施設では掃除を通じて環境を整えることで患者さん、利用者さんの命を守る必要があるのです。
しかし、このように命を守る大切な役割を担っているものの、病院や施設での掃除にはさまざまな問題が発生しています。
まず、どこがどのくらい汚れていてどういう掃除が必要なのか。明確な基準がないままとにかく決められた範囲の掃除をするというのは非常に非効率的です。それが清掃だという思い込みを根本からなくさなければ品質は向上しません。
また、患者さんのため、よりよいサービスを提供しようと現場で清掃スタッフが一生懸命がんばっていても、社会のイメージや第一印象だけで判断されてしまったり、声を出せなかったりなど、伝えたいことが正確に伝わらないもどかしさもあります。
私が32年間経験してきた掃除に関する知識やノウハウを医療、介護、福祉、教育のみならず、これからは一般家庭でも「いのちを守る」掃除としてお伝えしていくことが私の使命であると考えています。